高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)とは、交通事故や脳血管障害の発症によって、脳に損傷を受けることにより起こされる様々な神経心理学的症状のことです。症状は脳の損傷部位によって特徴があり、注意障害、記憶障害、失語症、失行、失認、見当識障害などの種類があります。

脳の部位と障害の関係

各部位の名称をクリック(タップ)すると説明が表示されます。

ネットワークとしての脳活動

近年では各部位の働きではなく、ネットワークで脳活動を行っていることが示唆されてきています。上図は行為を行う際のネットワークを表した図です。このネットワークは左右にあると言われており、ネットワーク障がいによって高次脳機能障害を呈するとも言われています。上方のネットワークをオンラインと呼び、物を見た際に運動を生成すると考えられています。それに対して下方のネットワークが上方で生成された運動が適しているかの判断を行い修正すると考えられています。つまり、下方のネットワークが障害されると間違った運動を行っても修正できず、間違った行動に結びついてしまいます。

高次脳機能障害の
リハビリテーション

高次脳機能のリハビリテーションは、本人の意識に関係なく運動させるだけでは大きな変化を得られません。当院では脳科学の側面から理論に基づき、本人の認知機能の改善も目指したリハビリテーションを行います。
まずは、患者様ご自身がどの様な症状や障害・認識のズレなどがあるのかをご理解いただくこと目指します。そして、患者さまおひとりの症状に合わせてリハビリを行い、日常生活・社会生活への早期の適応を目指します。

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前頭葉内側部

物事を客観的(メタ認知)にとらえる機能を司る部位とされています。障害されると人格の変化等がおき、自己中心的になりやすいです。

治療について

左前頭前野内側部の障害で客観性が乏しくなってしまった患者様に対しては、表情を読み取る訓練や、場面カードを使用してその場面では何を感じるのかを一緒に考えてもらいます。
その際には、本人に少し考えれば解る難易度で設定し、ヒントなども与えながら答えてもらうようにして、客観性の向上を目指します。

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前頭葉背外側部

行為のプログラム生成を司る部位です。障害されるとプログラムが上手に行えず道具を使用できなくなったりします。

治療について

前頭葉前野外側部や前頭葉背外側部の障害で文脈が読み取れない、行為のプログラムが行えない等の症状を呈した患者様には絵カードを使用して文脈にそった順番での並び替え訓練を行い、行為の計画性向上を目指します。

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頭頂葉下側部(下頭頂小葉)

物事などの概念形成を司る部位です。障害されると、物事の概念が分からなくなり道具等を間違った使い方で使用したりしてしまいます。

治療について

左頭頂葉下部の障害により概念形成が困難となった患者様には物品の形状を一緒に確認したり、物品素材の材質を一緒に確認したりして、概念形成を促して改善を目指します。

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前頭葉外側部

行為の計画を司る部位です。障害されると、文脈に適した行動が行えなくなります。

治療について

前頭葉前野外側部や前頭葉背外側部の障害で文脈が読み取れない、行為のプログラムが行えない等の症状を呈した患者様には絵カードを使用して文脈にそった順番での並び替え訓練を行い、行為の計画性向上を目指します。

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ブローカー野

発語を司る部位です。障害されると、言葉を発する動きが生成できなくなります。

治療について

左前頭葉外側後部の障害により発語を障害された患者様は、感覚障害によって口の形状を認識できなくなっている可能性があるため、口の中の感覚統合訓練によって改善を目指します。

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ウエルニッケル野

単語認識を司る部位です。障害されると他社の話している言葉が解らなくなります。

治療について

左側頭葉の障害により単語の認識に障害を生じた患者様には単語意味の確認を行ったり、以前使用していた物品を頭の中で想起してもらったりして単語の認識向上を目指します。

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頭頂葉下部(下頭頂小葉)

自己身体所有感覚を生成する部位です。障害されると自己身体所有感が弱化し、他者の体であるという感覚の症状をきたします。

治療について

右頭頂葉下部の障害によって自己身体の所有感覚に障害を負った患者様に対しては、閉眼にて自己身体の触られている感覚や、自身の手で触ったものの識別を行ってもらうことで所有感の改善を目指します。

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前頭葉背外側部

同時刺激を判断する部位です。障害されますと複雑な処理が困難になります。

治療について

右前頭葉背臥位側部の障害によって同時刺激に対する障害を負った患者様に対しては、自身で判断可能な範囲で2点の刺激を行ってしっかりと把握できるようになった後に3点を刺激したり、刺激する距離を近づけたりして刺激に対する判断の向上を目指します。

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後頭葉背外側部

近位の空間や自己を中心とした空間を把握する部位です。障害されると近位空間の左半分が認識できない(半側空間無視)などの症状をきたします。

治療について

右前頭葉背臥位側部や側頭葉前部の障害によって空間の認識が困難な患者様は、空間認識に必要な体の感覚と視覚の統合が行えていない可能性があるため、体の感覚の改善や視覚と合わせる訓練を行って空間認識の改善を目指します。

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側頭葉前部

遠位の空間や物体を中心とした空間を把握する部位です。障害されると物の左半分が認識できない(左半側空間無視)などの症状をきたします。近位の空間や自己を中心とした空間を把握する部位です。障害されると近位空間の左半分が認識できない(半側空間無視)などの症状をきたします。

治療について

右前頭葉背臥位側部や側頭葉前部の障害によって空間の認識が困難な患者様は、空間認識に必要な体の感覚と視覚の統合が行えていない可能性があるため、体の感覚の改善や視覚と合わせる訓練を行って空間認識の改善を目指します。

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