うつ病は、ゆううつになって気分が落ち込んだり、無気力感にとらわれてやる気が失われる、眠れないといった症状が現れます。頭痛などの身体症状が出る方もいます。脳の器質的な原因で発症することもありますが、最近は職場環境が原因となった過労、人間関係のストレスなどからうつ状態になり、発症する方が増えています。記憶力、判断力、理解力などが低下し仕事でのミスが続きますが、初期段階では自覚症状として捉えにくく見過ごされがちです。睡眠障害で朝起きられないといった状態から生活リズムが狂い、うつ状態になる方もいます。
責任感が強くがんばる人がかかりやすい病気とされています。素人判断で仕事を休み、昼間、眠って過ごすような対処方法は生活リズムがずれていくだけで、逆効果な場合があります。症状を放置していると自殺などの可能性につながるので周囲の方も慎重な対応が必要です。専門家による早期治療が効果的なので、兆候がある場合はすぐに相談・受診しましょう。
過度の高揚感にあふれて活動的になる躁状態とうつ状態が交互に現れる躁うつ病や、器質的原因が大きい重度のうつ病には適度な薬物療法が効果的です。また、認知療法が有効な場合もあり、くじらホスピタルでも行っています。
治療について
休養をとる
仕事の忙しさなどが原因で、こころが疲れた状態になっている場合は、まず心身を休ませることが重要です。その際、家にこもって寝て過ごすのではなく、睡眠、起床、活動、食事といった生活の基本リズムを整えながら過ごします。アセスメント入院(検査的入院)で様子を見ながら生活を整え、休養する方法も有効です。
薬について
病状を見ながら、抗うつ剤や抗不安薬などを処方していきます。睡眠障害の症状が出ている場合は、睡眠導入剤や中途覚醒を防ぐ薬などを処方することもあります。
各種療法
患者様自身の「こころの回復力」を引き出すため、食事療法、アロマテラピー、音楽療法、芸術療法なども効果的です。心理療法士による認知療法で、患者様自身が考え方のクセやゆがみに気づき、対応する方法を知ることも有効です。
ライフスタイルの見直し
外来治療を続けたり、一時的な入院治療を行っても、病気の原因となる働き方や生活環境が変わらないと治りにくく、治っても再発する可能性があります。治療と同時に、職場や家庭など周囲の方に協力を得て、仕事や生活スタイルの見直しを行うことが不可欠です。
入院のきっかけ
昇進を機に会社を休みがちになった40代男性
会社員のAさんは昇進後、部下も増え、新しいプロジェクトを任されて仕事に励んでいました。しかし、度々、会社を休むことが増えていきました。残業が続いていたため、家族も本人も疲れからくる体調不良だろうと思い、内科を受診。ところが、内科的には異常なしでした。休養をとって様子を見ていましたが、よくなったと思って出勤の準備をしていても、結局、具合が悪くなり寝込んでしまう日が続きました。そのうち、「死にたい」と言ったり、家族に対して怒りっぽくなっていき、心療内科のクリニックに相談。うつ病を発症していることがわかり、入院治療を進められて当院へ入院しました。現在、治療を続けながら職場復帰を目指しています。