「認知症だから治らない」。
そうあきらめる前に…
老人性うつ、かもしれません

子どもや働きざかりの大人がうつ病にかかるように、高齢者もうつ病にかかります。
身体の不調を訴え、「何もしたくない」と一日中ぼーっとしていたり、反応が鈍くなったり、さっきやったこと・聞いたことをすぐに忘れたり、認知症と症状が似ている部分もあるため、間違われることも多いです。
しかし、認知症とうつ病の治療は異なります。まずは、正しい診断を受け、適切な治療を受けること。
「治らないだろう」 「元には戻らないだろう」とあきらめていた症状が良くなるかもしれません。

うつ病(老人性うつ)を発症するきっかけとは?

高齢者の場合、退職や子どもの独立などの生活環境の変化、身近な人との死別、老化に伴う身体的・精神的な衰えなどが原因となり、始まることが多いです。
きっかけになりやすい出来事としては次のようなことがあり、ささいな出来事がうつ病の発症につながることもあります。

  • 定年退職したものの、することがない
  • マンションを買ったものの、「借り手がなかったら…」と心配
  • 子どもが独立して夫婦だけの生活になった
  • 夫婦の性的関係がなくなり、夫に女性からメールが入っているのを見た
  • 可愛がっていたペットが亡くなった
  • 子どもが離婚した
  • 長期間、入院・通院を続けているのに、よくならない
  • 家のリフォームをしたが、思い通りにならなかった
  • 転倒して膝を悪くして以来、外出しなくなった
  • 親戚から悪口を言われた
  • 脳卒中にかかり、後遺症が残った

など

高齢者うつ病の特徴

頭痛やめまい、しびれ、肩こり、耳鳴り、吐き気、食欲不振、不眠など、身体症状を訴えることが多いのが特徴です。そのため、内科や外科などを転々としていろいろな検査を受けたけれど、「異常なし」と言われた…という方も少なくありません。
また、不安や焦燥感が強く、落ち着きがなくなったり、ぼんやりしていたりと認知症のような症状を表すこともあります。こうした症状はそのまま放置していると寝たきりにつながり、そのことが精神的にも身体的にもマイナスな影響を及ぼし、さらなる悪循環をまねきます。また、老齢期のうつ病では、自殺率が高いということも特徴の一つです。

認知症との違い

高齢者のうつ病 認知症
病気の進行 若々しく活動的だった方が、何らかのきっかけで激変してしまいます 症状はゆっくり進みます
初期の症状 抑うつ症状、心気症状(胃もたれ、体中が痛い、など) 記憶障害、気分のムラ、性格の変化
日内変動 朝の方が調子が悪く、夕方になるにつれ、良くなる 特にありません
妄 想 疾病妄想・貧困妄想・過剰な罪悪感が三大妄想。ささいな出来事・症状から妄想が膨らんでいく(「腰が痛いから、がんで死ぬのではないか」、「お金がまったくなくなった」、「周りに迷惑をかけているから、死んだ方がいい」 など) 物取られ妄想、性的な逸脱行為(それまでになかったような恋愛関係をもったり、紳士的だった人がお尻を触ったりするようになる など)
攻撃性 特にありません 攻撃的になる
忘れ方 短期記憶 基本的な記憶を忘れている(親しい人がわからない、今の年号や自分の職業・名前がわからない、など)

治療について

うつ病の治療には、薬と休養が大切です。一進一退を繰り返しながらの回復になりますが、適切な治療を続けることで治る病気です。
また、高齢者のうつ病は、生活環境の変化がきっかけとなることが多いため、環境を整えることも大切です。薬物療法とともに、落ち着いた環境での入院生活、簡単なモノをつくる、絵を描くなど個人にあった治療法をを併用し、本人が潜在的に持つ力を引き出して快方に導く治療を行います。

診察

高齢になってから発症する老人性うつ病は、ほかの病気や衰えとの関係もあり、専門家でも診断が難しい病気です。まずは専門医が患者様の心身の健康状態を正確に把握して診察し、慎重に診断します。

薬について

同じ薬を処方しても若年者と高齢の患者様では、体内での作用・副作用が違います。抗うつ剤の処方も、患者様の体格・健康状態、その他の心身の病気などに応じた微調整をしながら行います。

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